2019年11月22日 (金) 〜 12月1日 (日) 会期中無休

八太 栄里 個展「経年のゴースト」

平面作品の展示販売。

「経年のゴースト」
その土地に降り積もった時間が吹き溜まりのように見えることがある。
例えば道端に石仏のある風景。人気のない場所にぽつんと佇む農機具小屋のある風景。現存しない店舗を案内し続ける看板のある風景。
作品制作において時間や気配といった目に見えないものの形を画面にどう描くかを常に考えているが、移りゆく風景の中で置き去りにされたものたちが放つ存在感に注目している。
時間を吸収したものたちは時を重ねれば重ねるほど自身の存在感を色濃くしていく。
日本では昔から付喪神といって、長い年月を経た道具などには神や精霊が宿ると考えられているが、風景の中にもそれと似たものを私は感じている。

「残留思念」といって、人が強く何かを思った時にその場所や物に残る思考や感情を指す言葉がある。その言葉を用いてたびたび浮遊する人の形を画面に描いてきたが、わたしが描くこの思念は個人の単一的なものではなくて不特定多数のさまざまな思念のかたまりである。幽霊や妖怪のうまれる原因にはそういった人間の意識の集合体が関係していると考えられることもあるが今、目にしている風景の形の中にもきっと人間の長い営みの中で生じる不特定多数の思念が積み重なり宿っているのだろうと想像を膨らます。
今回のタイトルに用いた「ゴースト」という言葉には幽霊や妖怪という意味の他にも痕跡、残影といった意味がある。
さまざまな土地にあるゴーストを見出し、私はこれからも描いて行くだろう。今はまだ色濃く存在感を放つゴーストもいつまでその面影をとどめているかは分からない。
今ある風景を絵画として成立させることで、新たな時間軸を与え、新しい記憶を宿すことは地方の開発(もしくは衰退)が進むこの時代において、絵画の持つ重要な役割ではないかと考える。
目に見えない形を想像するとき、その背景にある時間のことを考える。表層だけをなぞるのではなく、その土地の地層を掘り返していくように、目の前の風景と向き合う必要がある。

出展作家

八太 栄里

期日・場所

タイトル
八太 栄里 個展「経年のゴースト」
会期
2019年11月22日 (金) 〜 12月1日 (日) 会期中無休
営業時間
10:00〜18:00
場所
〒488-0007 愛知県尾張旭市柏井町公園通542 GALLERY龍屋